<こどもの日イベント>福山ゆりミニ講 話・ユダヤ人の家庭教育から学ぶ「男の子の育て方」②
下記は5月12日に行われたこどもの日イベントでの
福山ゆり代表による講話文字起こしです。
次回は7月7日“夫婦を題材としたオンライン・イベントを開催予定です!
沢山のご参加をお待ちしております。
ユダヤ人の家庭教育から学ぶ「男の子の育て方」
第3のポイント:安息日の文化から学ぶ家族中心の価値観
第3のポイントは、「安息日の文化から学ぶ、家族中心の価値観」についてです。
皆さんは「安息日」という言葉をご存知でしょうか?
ユダヤ人にとって安息日(シャバット)は、金曜日の日没から土曜日の日没までの24時間を指します。この間、労働を一切せず、家族と過ごし、神に礼拝を捧げる大切な時間なのです。
このシャバットは、イスラエル建国以前からずっと、世界各地のユダヤ人コミュニティによって守られてきた伝統です。
こんな言葉もあります。
「ユダヤ人が安息日を守ったのではなく、安息日がユダヤ人を守った。」
つまり、国家を持たず流浪の民であったユダヤ人が、なぜ2000年もの間、自らのアイデンティティを守り続けることができたのか。その理由の一つが、この週に一度の安息日だったのです。
安息日では、家族が共に過ごすことが何よりも大切にされます。
労働も、料理も、掃除も、すべてをお休みします。
ペンを持って何かを書くことすら避け、神と家族のことだけに集中するのです。
そのため、この時間を安息日の食卓を準備する母親や妻に対して、家族が敬意を表すという意味合いもあります。
また現代では、このシャバットが「デジタル・デトックス」の役割も果たしているとも言われています。スマホやパソコンから離れて、家族や祖父母、そして地域の孤独な人々とも交わる時間。まさに「縦(神)と横(家族・隣人)とのつながり」を取り戻す時間です。
ユダヤ人家庭では、このシャバットを通して、祖父母と孫が一緒に聖書を読み、語り合います。
そんな時間が日常の中に自然に組み込まれているからこそ、「世代間教育」が特別なものではなく、当たり前に行われているのです。
日本人の私たちが学べることとしては、「家族だけの時間を定期的に持つことの大切さ」です。
現代の私たちはとても忙しい毎日を送っています。私自身も、子どもが中学生になってから本当に時間が取れなくなって、親子でじっくり話せるのが夜10分〜15分しかないことも多くあります。
だからこそ、1週間に1回だけでも、たとえば土曜の午前中、あるいは日曜の午後などを「家族の日」として過ごすことが大切だと思います。
すべての家事を放り出して過ごすのは難しいかもしれませんが、「スマホを置いて、家族と過ごす時間」を意識的に作っていくことは、私たち現代人にとって本当に必要なことなのではないでしょうか。
第4のポイント:13歳の成人式(男の子の成人式バル・ミツバ)とアイデンティティの確立
第4のポイントは、「バル・ミツバ(Bar Mitzvah)」、つまりユダヤ人の成人式を通して学ぶ、アイデンティティの確立についてです。
こちらのスライドには、ユダヤ人のかっこいい男の子の写真がありますが、彼らにとって成人を迎える年齢は「13歳」とされています。日本で言う元服のようなもので、現代の私たちから見るととても早いと感じるかもしれません。
このバル・ミツバとは、単なる年齢上の成人ではなく、「共同体の一員」としての責任を負う存在として認められる通過儀礼です。
女の子は「12歳」で「バット・ミツバ(Bat Mitzvah)」という儀式を行いますが、男の子は13歳になると、自分自身と神との関係において責任を持つようになります。
思春期に差しかかるこの時期、親への反抗心や自立心が芽生え始める時期でもあります。ユダヤ人の家庭では、この13歳を迎えるまでに徹底した信仰教育や市民教育を行い、信頼関係を築いた上で、子どもを一人の大人として認めて「手を離す」のです。
「13歳になったから自由にしていい」という意味ではなく、
「あなたには信仰と責任を持って生きる力がある」と認めて、共同体に送り出すのです。
この儀式の準備は3歳頃から始まります。たとえば、3歳でヘブライ語を学び始め、5歳頃から聖書を学びます。そしてこのバル・ミツバの日、本人は旧約聖書(トーラー)をヘブライ語で朗読し、自分の言葉で解釈し、それを家族や親族、地域の人々の前で発表します。
この経験を通して、「自分はユダヤ人として生きていく」という自覚が芽生えるのです。
当日は、多くの親族が集まり、3つの贈り物を渡されると言われています。
- トーラー(旧約聖書)
→「信仰を持って生きなさい」という意味を込めて。 - 時計
→「時間を大切にしなさい。非生産的な生き方はするな」という教え。 - シードマネー(種銭)
→数百万円規模の贈与があり、そこから親と相談しながら投資の勉強を始めていきます。株や債券の分散投資を行い、大学卒業時にはそれがまとまった資産になっている、というケースも多いそうです。
つまり、13歳の時点で、「信仰・時間・経済」の3つにおいて責任ある一人の青年として認められるのです。これは一朝一夕にはできません。小さな頃から、家庭内で信仰や文化的ルーツを学び、主体的に考える教育を受けてきたからこそ可能なのです。
私たち日本人がこの制度をそのまま真似することは難しいかもしれませんが、「自分のルーツを語れる子どもに育てる」という観点では大いに学ぶべき点があると思います。
私自身、日本人として韓国に嫁いだ身ではありますが、子どもにも日本語や日本文化に触れる機会をできる限り持たせています。
子どもが自分のルーツに誇りを持ち、どこにいても自分らしく生きられるよう、アイデンティティ教育は特に男の子にとって重要だと感じています。
また、日本の地域に根ざした「祭り」や「地域行事」など、共同体の一員として子どもを育てる機会も大切にしたいですね。
日本独自の通過儀礼や風習を、時代に合わせて再発見し、子育てに活かしていくことも、私たち親の大切な役目だと思います。